「ベトナムを象徴するバインミーのような、さまざまな文化が交じり合ったものづくりをしたい」
子供服&雑貨担当・鈴木真由さん
ベトナムに暮らして、かれこれ15年。思いのほか、長いつき合いになりましたが、もとはといえばフランス映画がきっかけでした。ゴタールの世界に憧れて、パリを訪れたのが94年。その後、ますますフランスへの憧れが強くなっていくのですが、若かった私にはパリは遠い存在でした。その代わりにといってはナンですが、トラン・アン・ユンの映画の影響もあり、フランス領だったベトナムにも興味を持つようになったのです。
思い立ったら行動しないと気がすまない私は、96年に初めてベトナムを旅行しました。思い返せば、今もベトナムに住み続けているのは、このときに食べたバインミーの印象が強かったからかもしれません。
バインミーとは、ベトナムのサンドイッチのこと。フランス文化であるバケットにパテを塗り、ベトナム風にアレンジしたハムを挟み、香草となますのような酢漬けの野菜でアクセントをつけ、ヌックマムですべての調和をとる……といったさまざまな文化が交じり合った味は、ベトナムそのものを表しているように思えたのです。
私がサイゴンに暮らし始めた97年のころは、街の建築物をはじめ、紙やノートなどの雑貨に至るまで、生活のちょっとしたところに、どこかフランスの面影のようなものが、色や形として残っていました。図柄やデザインは、本家フランスと比べると微妙なズレやヌケがあるのですが、文化が交じり合うことで調和がとれるものがあります。ベトナムの雑貨はまさにそれ。
また、ベトナムには手仕事で作られたものが生活の中に融け込んでいるのも魅力でした。ナイロン素材をかぎ針で編み込みバッグを作ったり、ひと針ずつ刺して絵柄を作る気の遠くなるような手刺繍であったり……。今ではそんな職人さんも少なくなってしまいましたが、本来、手仕事が得意なベトナム人の特色を生かしたものづくりをしていきたいと思い、サイゴンに店を構え、バッグやクッション、キッチングッズなどの生活雑貨と、子供服・婦人服を作っています。
かぎ針で作ったモチーフを子供のTシャツに加えたり、ビーズや刺繍で作った人形であったりと制作には手間がかかっていますが、vi duの商品を通じて手仕事の温かさが伝わればいいな、と思っています。
蚤の市では、遊び心のあるデザインの子供服と雑貨をメインに、決して繊細ではないけれど、どこか物語が浮かぶような、生活が楽しくなるものを提供できたらと思っています。