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木から生まれるエネルギー

~古川葉子 木彫展~
日時 317日(土)~325日(日)午前10時~午後6
(最終日のみ午後5時まで)
場所 古民家スタジオ・イシワタリ
   鎌倉市長谷1-1-6 地図へ

※3
18日(日)午後6時~、ささやかなオープニングパーティーを開催します。お気軽にいらしてください。


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Profile
古川 葉子 Furukawa Yoko

1986年、神奈川県生まれ。2008年、多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業

【展示略歴】
2005年~2010年、聖路加国際病院における「木との語らい 多摩美術大学木彫教室作品展」/2010年、青梅市齋藤園にて「Art Program Ome 2010 リフレクションー余白との対峙」/2011年、台湾国立台北芸術大学美術館にて「彫刻五七五ー国際芸術大学交流展」、神奈川県民ホールにて「古川葉子展」ほか







桜の開花が待ち遠しい
3月中旬~下旬、古民家スタジオ・イシワタリでは、若手木彫作家・古川葉子さんの作品展を開催します。「古民家と私の作品が共鳴することで新たなエネルギーが生み出せれば」、と古川さん。自身の作品に対する思いを語っていただきました。




ー木彫との出会い


幼少の頃から、絵を描くのが好きな子どもでした。美術系の高校に進学してからは、油絵を好むようになりました。そんな私が、平面ではなく立体に興味を持つようになったのは、夏休みの課題で『擬音語を形にする』というテーマに取り組んだときのこと。“ふわふわ”を表現しようと、空からティッシュが舞い降りてくるイメージの作品を作ってみたら、手で感触を味わいながら表現することがとても面白く、虜になりました。絵も好きでしたが自分が進む道は、絵ではないな、と……。

そして、私は彫刻の道を選びました。彫る行為はマイナスの表現法ですが、実は新たな形を生み出すプラスの表現法でもあります。それを私が最も強く感じたのが、木彫でした。


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たとえば、チェーンソーで木を切ったとき、そこで初めて目にした年輪に新たなインスピレーションが生まれます。この模様、おもしろいな、これを活かして何か表現できないだろうか? そうやって私は、木を見つめながら、自分が表現したいことを形にしていきます。はじめは、自分自身も何を表現したいのかハッキリ言葉にできません。私にとって“彫る”という表現行為は、“自分の答えを導き出す”事なのです。




ー古民家に惹かれた理由


作家にとって、自分の作品はわが子も同然。人前に披露するときは、これまで自分の子宮の中にいたわが子のへその緒を切り、外界へ出す心境です。これまでもいくつかの展示会に出品をしてきましたが、昨年、鹿児島の栗野駅という駅の古い駅舎を使った展示会で、自分の作品を見たとき、私の作品は、人の体温やぬくもりが残る場所が好きであるということに気がつきました。そして、そのような場所に置くことで、自分の作品がより生きてる存在となることを感じました。


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古民家スタジオ・イシワタリは、私と私の作品にとって、まさに理想の場所でした。築84年の木造家屋には、今は誰も暮らしていませんが、それまで暮らしていた家族、訪れた人々の体温が、今もなお残っている気がしました。初めてこの家に訪れたときに感じた温かさ……、私の作品を置く場所はここだ、と確信したのです。




ー木から伝えたいもの


私は、これまでのすべての作品において、“エネルギー”という共通のテーマを表現し続けてきました。今回展示する作品の一つに『熱』という作品があります。(ページトップの作品)イメージしているのは、木の根です。

この形は、コンテンポラリーダンスの動きを参考にしています。私はこのダンスにとても興味をもっています。不思議な動きを織りなすことで、独特の世界を表現するコンテンポラリーダンスは、見る人を驚かせるだけでなく、踊っている本人でさえも「えっ? 私ってこんな動きができるんだ!」と新たな発見をさせてくれます。その動きは、あるときは力強く、あるときはおどけて、あるときは艶かしく見えるなど、見る人によって感じ方が違ってきます。このダンスと同じように、『熱』にはこう感じなければならないという答えはありません。見る人によって何かを感じてもらい、心を突き動ごかす存在(=エネルギー)でありたい、そう思って作りました。

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この作品を作ったのは、東日本大震災の後。作品を作っているときは、あまり意識はしていなかったけれど、今思えば、自分を見つめ直すよい機会となりました。木の根をイメージした作品を作りたかったのは、自分自身の根を張る場所を探したかったからかもしれません。この作品を通じて決心したこと。「私は、木彫とともに生きる。」(古川葉子 25歳)
文:石渡真由美 写真:福井隆也




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